諸々の法は影と像の如し
「術師のほうは断然若かったです。そらそうでしょ、若くして才能があったからこそ、市井の術師でも有名だったんですから」

「え! そうなの?」

「章親様よりも……いや守道様よりも、もう少し上ってぐらいでしたかね」

 当時を思い出すように、毛玉が首を傾げる。
 件の術合戦を、吉平は実際に知っている。
 ということは、晴明はすでに結構な歳だった、ということだ。

「お、おじい様……。そんな小さい子を大人げなくやっつけたの……」

 政治絡みの何かもあったのだろうが、わざわざ当てたものを変えてまでコテンパンにやっつけなくても、と項垂れる章親に、毛玉はまた、ぶんぶんと手を振った。

「小さくはないですって。今の章親様よりも年上ですし。でも政敵が担ぎ上げようとしているからには、若いからこそ徹底的に芽を摘んでおく必要があったのかも」

 脅威になり得る芽は、摘んでおいたほうがいい。
 まして相手は市井の術師だ。
 陰陽寮で管理している者ではない。
 自由な分、何でも出来るのだ。

「じゃあ、僕らの世代にどんぴしゃなわけだ」

 おそらく術師の子は、章親と吉平の間ぐらいか。
 当時の記憶もあろう。
 となると、なるほどまだ恨みは深いかもしれない。
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