諸々の法は影と像の如し
「そっかぁ。うん、聞いた限りじゃ、その術師ではないのかなぁ。でもその人に連なる誰かかもしれないよね」

 う~ん、と首を捻りながら、章親は当時の術合戦の記述を読み返した。

「……蘆屋 道満(あしや どうまん)か。縁者を洗ってみようか」

「とはいえ道満本人は、もういないと思いますけど」

「僕は会ったこともない人だしなぁ。名でしか探しようがないけど、一応式に探ってもらおう」

 そう言って、章親は蝶の形に切った何枚かの紙を取り出し、短く呪を唱えると、ふっと息を吹きかけた。

「『蘆屋』に引っかかるものを探してきておくれ」

 章親の手から、わらわらと小さな蝶が飛び立っていく。

 簡易の式は、あまり高等な仕事はこなせない。
 『蘆屋』という言葉だけを覚えさせて、それに引っかかる情報だけを集める。
 ざっくりとした情報だが、『蘆屋』は、そうある名前ではない。

「すごーい。さっきのが式神ね」

 不意に明るい声がし、同時にぱちぱちと手を叩く音がした。
 顔を上げると、すぐ前で宮様が拍手している。

「実際に飛ばすところを初めて見たわ。陰陽師って感じよね~」

 何だかすっかり存在を忘れていた。
 そういえば毛玉が話し始めたときに、上座から近くに来たのだった。
 気付けば章親と魔﨡と宮様で、普通に向かい合って座っている。
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