諸々の法は影と像の如し
「我にはそのようなこと、言わぬくせに」

 章親と宮様の丁度中間で、魔﨡がぼそっと呟く。

「ま、魔﨡は何だか現実味がないから返って緊張しないんだよ」

「現実味がない?」

「神様だもの。僕ら人なんて、及びもつかないから、何か麻痺して、返って親しみがあるっていうか」

 少し不満そうだった魔﨡だが、章親の説明に、んむ、と口を噤む。
 自分のほうが親しい、ということに満足したようだ。

「私は人だから、親しみがないって言うの?」

 魔﨡の機嫌が直った途端、宮様の機嫌が悪くなる。

「折角歳の近いお友達が出来たと思ったのに。落ちぶれた宮家なんて、そこいらの貴族よりも惨めだったいうのに、宮家ってだけで皆そんな態度でさ。関わり合いを避けるのよね」

「い、いえ、そんな。落ちぶれたといっても、ちゃんと立派に伊勢の斎宮に引き立てられてるじゃないですか」

「あのねぇ。伊勢の斎宮だって、もちろん名誉なことではあるけど。ほんとに大事な姫宮なら、普通は賀茂の斎院になるのよ。近いでしょ、御所から。斎院は内親王しかなれないしね」
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