諸々の法は影と像の如し
「……伊勢の斎宮も、そうなんじゃないですか?」
「斎宮は、もうちょっと下でもいいの。一応私だってお上の孫よ」
「そうでした」
章親が再び平伏すると、宮様は上座よりずりずりっと膝でにじり寄って来た。
「だから! お上の縁者だからって、皆が皆そんな偉いわけじゃないの! 同じ人なんだから、私にこそ親しみを覚えるものなんじゃないのっ?」
「宮様に親しみだなんて、そんな恐れ多い」
「神様に親しみを覚えるくせに、何で落ちぶれ宮姫にそんな畏まるのよ!」
言うなり宮様は、持っていた扇で思い切り章親の頭を殴った。
思いもよらない攻撃を、身構える暇もなくまともに食らったお蔭で烏帽子が飛び、章親は額を床に打ち付けた。
「な、何をするんです」
打った頭を押さえて顔を上げた章親は、ぎょっとした。
目の前の宮様は、扇を握りしめて章親を睨んでいる。
が、その目には涙が溜まっていた。
宮様は、章親が何か言う前に、ぷいっと身を翻すと、逃げ込むように上座に戻り、御簾を降ろしてしまった。
「……」
固まったまま、しばし時が過ぎた後で、魔﨡が、ぼそ、と『馬鹿』と呟いた。
「斎宮は、もうちょっと下でもいいの。一応私だってお上の孫よ」
「そうでした」
章親が再び平伏すると、宮様は上座よりずりずりっと膝でにじり寄って来た。
「だから! お上の縁者だからって、皆が皆そんな偉いわけじゃないの! 同じ人なんだから、私にこそ親しみを覚えるものなんじゃないのっ?」
「宮様に親しみだなんて、そんな恐れ多い」
「神様に親しみを覚えるくせに、何で落ちぶれ宮姫にそんな畏まるのよ!」
言うなり宮様は、持っていた扇で思い切り章親の頭を殴った。
思いもよらない攻撃を、身構える暇もなくまともに食らったお蔭で烏帽子が飛び、章親は額を床に打ち付けた。
「な、何をするんです」
打った頭を押さえて顔を上げた章親は、ぎょっとした。
目の前の宮様は、扇を握りしめて章親を睨んでいる。
が、その目には涙が溜まっていた。
宮様は、章親が何か言う前に、ぷいっと身を翻すと、逃げ込むように上座に戻り、御簾を降ろしてしまった。
「……」
固まったまま、しばし時が過ぎた後で、魔﨡が、ぼそ、と『馬鹿』と呟いた。