諸々の法は影と像の如し
「この能天気なぼんくらが! お主のそういうところがいかんのじゃ! 式に自我などない! もっと毅然と、我をも支配する勢いでないと、魍魎退治など出来ぬぞ!」

「え、そんな恐れ多い。御魂様を支配するなんて」

「我を召喚したからには、我に名を与えて縛るぐらいのことをしたらどうじゃ! お主は危機感というものがないのか? 我はお主の式ではない分、お主の意思通りに動かぬぞ」

 章親は御魂を見たまま、ちょっと考えた。
 確かにこの御魂は凶暴だ。

「そうかもしれないけど。やっぱり僕は、心あるものを無理やり支配しようとか思わない。御魂様だって不愉快でしょ。皆が気持ちよく過ごしたいじゃない」

 にこりと笑う。
 んむ、と御魂は唇を引き結んだ。

 普通の者が言えば腹が立つかもしれないが、章親が言うと何だか和んでしまう。
 邪気がなさ過ぎるのだ。

「お主は……ほんっと力が抜ける……」

 頭を抱える御魂に、章親はぽりぽりと頬を掻いた。

「あのぅ。何で御魂様は、僕のところに? 何かの事故的な感じで呼ばれてしまったみたいなことを言ってたけど」

 何か泉の近くで遊んでいたときに、うっかり呼ばれてしまったとか言っていた。
 そうであっても、章親の召喚に反応したのは事実なのだ。

 根っこの相性が悪かったら、召喚者の呼びかけにも反応しない。
 元々の波長が違うのだ。
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