諸々の法は影と像の如し
第十九章
 それから三日後、章親は守道と白川のほとりを歩いていた。

「怪しげな屋敷があるようにも見えんなぁ」

 のんびりと歩きながら、守道が言う。
 周りは大きな屋敷が続いている。
 まだ洛中から出て、そう経っていないので、街並みもそうそう変わらない。

 それに白川河川は桜の名所だ。
 貴族の別邸も多い。

「まさかこんな大貴族が関わっているのか?」

 あまりに力ある人物だと、一介の陰陽寮生では相手にして貰えない。

「え~、まさか。そんなことまで考えてなかったなぁ」

 きょろきょろと辺りを見回しながら、章親が言う。
 昨夜遅くに、式が戻って来たのだ。
 白川の辺りに、『蘆屋』という言葉に引っかかる屋敷があったらしい。

 章親が飛ばしたのは探索用の簡単な式なので、大した力はない。
 飛ばした本人が式の気を受け取って伝えたいことを読み取るのだが、それもぼんやりした感じだ。
 白川の辺り、とわかっただけで、具体的な場所がわかったわけではない。

「でも、そうだね。結構な術師だったらしいから、もしかしたら大貴族のお抱えとかになってるかも」

「それは晴明殿と実際にやり合った術師のことだろ。そいつがまだいるとは限らないぜ」
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