諸々の法は影と像の如し
「わかんないよ。おじい様はともかく、術師は随分若かったみたいだもの」

「じゃ、お前が会ったあのガキが、術師の子ってことか?」

「う~ん……。どうなのかなぁ」

 何となく昔の因縁から浮上したのがその術師だというだけで、今回の人食い鬼騒ぎとの関わりは、まだ見えていないのだ。
 それほど強い術師であれば、人食い鬼の召喚も可能なのでは、というだけである。

「けどまぁ、他には手掛かりがないもの」

「まぁなぁ。ガキがお前のことを知ってたっていうのも、その術師の子であれば説明がつくしな」

「そうなんだよね」

 祖父のことは都中の人間が知っているだろう。
 吉平も、そこそこの知名度はあるが、庶民の間ではどうだろう。
 そう考えると章親など、貴族ですら知らない人間のほうが多いはずだ。

 ただでさえ今は昔ほど陰陽師は活躍していない。
 『安倍家』『賀茂家』ぐらいの名は知られていても、やはり祖父の代までしかお互い有名人はいないのだ。

 貴族でもないであろう若者が、章親を見ただけでわかるとも思えない。
 会ったこともないのだ。
 となると繋がりは、やはり祖父の代の因縁としか思えない。

「しっかし、会ったこともないのに一目でお前のことがわかるなんて、相手はよっぽど恨みが深いと思ったほうがいいんじゃないか」

 守道が言ったことに、う、と章親の顔が引き攣った。
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