諸々の法は影と像の如し
「俺たちも術合戦の話は昔から聞いてたけど、相手のこととか、最近まで知らなかった。それは晴明殿にばかり目が向いてたからだ。勝ったほうなんだし。負けたほうは、そうはいかん。しかもちょっとした騙し討ちだし」

「騙したわけじゃないけど……」

「相手に対しては、な。でも周りの貴族を騙したようなもんだ。まんまと騙された貴族らは、さすがは晴明殿、となる。事の真相を見抜いていた術師からすると、さぞ悔しかったことだろうよ。その恨みつらみを子に言うとなると、そらぁ相手のことを事細かに伝える。だからあいつも、お前のことがすぐにわかった」

 うう、と章親は頭を抱えた。
 確かに守道の言う通り、恨みが深ければ深いほど、相手のことを子にこんこんと話すだろう。
 意趣返しをしようと思っていたなら、なおさらだ。

「……そんなところに乗り込むのは、まさに飛んで火に入る……じゃないの」

 格段に足の重くなった章親が、不安そうに言う。

「でも虎穴に入らざれば……とも言うぜ」

 にやりと笑い、守道は章親を引っ張って歩いて行く。
 気付けば大分上流に来たようだ。
 先程までとは打って変わり、周りは屋敷もまばらである。

 京というのは栄えているところを一歩外れると、一気に風景が変わる。
 鳥辺野や化野など、ちょっと外れたところには、打ち棄てられた死体がごろごろ転がっているのだ。

 この辺りも、いつの間にやら随分寂れている。
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