諸々の法は影と像の如し
庭を掃いていた惟道は、ふと顔を上げた。
少し遠くの壁際を、白い蝶が飛んでいる。
じ、とそれを見た後、惟道はゆっくりと蝶に近付いた。
そして、ひらひらと飛んでいる蝶を捕まえる。
惟道の手の中で、蝶は白い紙に戻った。
「……」
惟道は顔を上げ、屋敷を巡る高い塀を見上げた。
また少し考え、持っていた箒をその辺に立て掛けると、近くの簀子に手の中の式を置いた。
そしてそのまま門に向かう。
惟道がふらりと通りに出ると、少し離れた道端に、二つの人影があった。
章親と守道である。
二人は惟道を認めると、何か言葉を交わした後、一歩近づいてきた。
「お主はこの屋敷の者か」
口を開いたのは守道だった。
章親は少し後ろに立っている。
惟道と守道の間は、まだかなり開いていた。
惟道は守道を見、次いで章親に目をやった。
目が合った瞬間、章親には僅かに怯えたような表情が浮かぶ。
「ここはどなたのお屋敷だ?」
守道が重ねて言う。
それに、初めて惟道が口を開いた。
「……蘆屋 道仙」
澄んだ声だ。
が、章親は違和感を覚えた。
声が澄んでいるからこそ、この若者の異様な雰囲気が際立つというか。
「蘆屋……道仙? もしや、蘆屋 道満殿の縁者か?」
守道が食いついた。
彼には章親の感じる妙な気はわからないのだろうか。
少し遠くの壁際を、白い蝶が飛んでいる。
じ、とそれを見た後、惟道はゆっくりと蝶に近付いた。
そして、ひらひらと飛んでいる蝶を捕まえる。
惟道の手の中で、蝶は白い紙に戻った。
「……」
惟道は顔を上げ、屋敷を巡る高い塀を見上げた。
また少し考え、持っていた箒をその辺に立て掛けると、近くの簀子に手の中の式を置いた。
そしてそのまま門に向かう。
惟道がふらりと通りに出ると、少し離れた道端に、二つの人影があった。
章親と守道である。
二人は惟道を認めると、何か言葉を交わした後、一歩近づいてきた。
「お主はこの屋敷の者か」
口を開いたのは守道だった。
章親は少し後ろに立っている。
惟道と守道の間は、まだかなり開いていた。
惟道は守道を見、次いで章親に目をやった。
目が合った瞬間、章親には僅かに怯えたような表情が浮かぶ。
「ここはどなたのお屋敷だ?」
守道が重ねて言う。
それに、初めて惟道が口を開いた。
「……蘆屋 道仙」
澄んだ声だ。
が、章親は違和感を覚えた。
声が澄んでいるからこそ、この若者の異様な雰囲気が際立つというか。
「蘆屋……道仙? もしや、蘆屋 道満殿の縁者か?」
守道が食いついた。
彼には章親の感じる妙な気はわからないのだろうか。