諸々の法は影と像の如し
第二十章
それからたっぷり半刻ほど経ってから、ようやく簀子に人の気配がした。
「よぅ来られましたな」
言いつつ部屋に入って来たのは、大柄な男だった。
歳は吉平よりも上であろう。
だがなかなか整った顔立ちで、身に付けているものも上物だ。
屋敷と人物だけ見れば、どこぞの貴族と思うだろう。
「賀茂 守道と申す」
「安倍 章親です」
守道はそのまま名乗っただけだが、章親は軽く頭を下げてしまった。
身分は多分章親らのほうが上なのだが、相手の雰囲気と、大分年上ということもあって、反射的に身体が動いてしまったのだ。
ちょっと、守道が渋い顔をした。
「さてさて。都に名だたる陰陽師の家系の子息がお揃いで、このような田舎に何用か」
どこか面白そうに、道仙は腰を下ろした。
「単刀直入にお尋ね申す。今都を騒がせている人食い鬼の存在をご存じか」
守道がいきなり本題に入った。
回りくどいのは好きではない。
それに、この不気味な館からとっとと出たいという気持ちもあるのだ。
「人食い鬼……。はて」
瞬間、道仙の目が細くなったように思ったが、広げた扇で口元を隠して呟くように言う。
「あなたのお父上が、蘆屋 道満……ということでしょうか」
重ねて守道が問うたことに、道仙はどこか満足そうに頷いた。
「いかにも」
「よぅ来られましたな」
言いつつ部屋に入って来たのは、大柄な男だった。
歳は吉平よりも上であろう。
だがなかなか整った顔立ちで、身に付けているものも上物だ。
屋敷と人物だけ見れば、どこぞの貴族と思うだろう。
「賀茂 守道と申す」
「安倍 章親です」
守道はそのまま名乗っただけだが、章親は軽く頭を下げてしまった。
身分は多分章親らのほうが上なのだが、相手の雰囲気と、大分年上ということもあって、反射的に身体が動いてしまったのだ。
ちょっと、守道が渋い顔をした。
「さてさて。都に名だたる陰陽師の家系の子息がお揃いで、このような田舎に何用か」
どこか面白そうに、道仙は腰を下ろした。
「単刀直入にお尋ね申す。今都を騒がせている人食い鬼の存在をご存じか」
守道がいきなり本題に入った。
回りくどいのは好きではない。
それに、この不気味な館からとっとと出たいという気持ちもあるのだ。
「人食い鬼……。はて」
瞬間、道仙の目が細くなったように思ったが、広げた扇で口元を隠して呟くように言う。
「あなたのお父上が、蘆屋 道満……ということでしょうか」
重ねて守道が問うたことに、道仙はどこか満足そうに頷いた。
「いかにも」