諸々の法は影と像の如し
「とりあえず、周りを浄化してみる」

 現れたのは猿のような物の怪だ。
 顔の真ん中にあるでかい目と、その下の大きな口。

 身体は小さいが、両手三本の指の鋭い爪を、長い舌がべろりと舐めた。
 その隙間から、ぞろりと鋭い牙も見える。
 前に毛玉を襲った物の怪だ。

 これが、人食い鬼。
 同じ鬼で鋭い牙を持っていても、毛玉とはだんちの差だ。

「ほら! お前の獲物はここだ!」

 守道が、袖を振りつつ鬼に言う。
 守道が早々に穢れを取らなかったのは、囮になって鬼を捕まえるつもりだからか。

---そ、そりゃ、とっとと解決しちゃったほうがいいけどさぁ! 守道、無茶し過ぎだよ---

 心の中で泣きながら、章親は闇に向かって浄化の呪を唱えた。

『きしゃあっ!』

 鬼が唸り、再び守道に飛び掛かろうとする。
 が、守道に向かおうとすると、紺が攻撃を仕掛ける。

 さすが神獣だけあり、鬼にも怯まず立ち向かう。
 大きさが互角なだけに、なかなか決定打を打てないようだが。

「紺! 離れろ!」

 守道の命に、紺が離れた瞬間に、守道は先程から印を結んでいた手を、鬼に向かって突き出した。

「破っ!!」

 気の矢が、鬼に放たれた。
 ざく、と音がし、鬼の手首に突き刺さる。
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