諸々の法は影と像の如し
『ぎゃああぁぁ!!』
ただでさえ耳障りな鬼の絶叫が耳を打つ。
思わず耳を押さえた守道と章親の、その隙をついて、鬼は章親に飛び掛かった。
「ぎゃーーーっ!! 魔﨡ーーー! 助けてーーっ!!」
章親がほとんど無意識に叫んだ瞬間、しゃらん! と聞き慣れた音がした。
同時に、ばさ、と銀色の髪が頬を打つ。
「章親っ」
すぐ前に現れた魔﨡は、とりあえず章親の周囲に目をやると、錫杖を構えて振り返る。
が、その間に、鬼は章親の横をすり抜けて闇に飛び込んでしまった。
「あっ! くそっ」
鬼に気付いた魔﨡が闇に振り被った錫杖を叩き付けるが、そのときには普通に戻っていた壁に、がきんと当たっただけだった。
「……」
しん、と室内に静寂が訪れる。
「章親。大事ないか?」
足元にへたり込んでいる章親に向かって言い、魔﨡はぐるりと部屋の中を見回した。
「うん。魔﨡、ありがとう」
息をつき、章親も立ち上がる。
己に向かってくる鬼にビビッて魔﨡を呼んでしまったが、あの鬼は、形勢不利と見て逃げようとしただけだったのではないか。
だから穴の傍にいる章親のほうに行く羽目になっただけなのだろう。
章親には穢れが付いていなかったのだから、もしかすると章親のことなど見えていなかったかもしれない。
ただでさえ耳障りな鬼の絶叫が耳を打つ。
思わず耳を押さえた守道と章親の、その隙をついて、鬼は章親に飛び掛かった。
「ぎゃーーーっ!! 魔﨡ーーー! 助けてーーっ!!」
章親がほとんど無意識に叫んだ瞬間、しゃらん! と聞き慣れた音がした。
同時に、ばさ、と銀色の髪が頬を打つ。
「章親っ」
すぐ前に現れた魔﨡は、とりあえず章親の周囲に目をやると、錫杖を構えて振り返る。
が、その間に、鬼は章親の横をすり抜けて闇に飛び込んでしまった。
「あっ! くそっ」
鬼に気付いた魔﨡が闇に振り被った錫杖を叩き付けるが、そのときには普通に戻っていた壁に、がきんと当たっただけだった。
「……」
しん、と室内に静寂が訪れる。
「章親。大事ないか?」
足元にへたり込んでいる章親に向かって言い、魔﨡はぐるりと部屋の中を見回した。
「うん。魔﨡、ありがとう」
息をつき、章親も立ち上がる。
己に向かってくる鬼にビビッて魔﨡を呼んでしまったが、あの鬼は、形勢不利と見て逃げようとしただけだったのではないか。
だから穴の傍にいる章親のほうに行く羽目になっただけなのだろう。
章親には穢れが付いていなかったのだから、もしかすると章親のことなど見えていなかったかもしれない。