諸々の法は影と像の如し
「これ、持って帰ろう」

「ええっ!」

「これ以上の戦利品があるか? これを分析すれば、奴が何なのかもわかる」

「そそ、そんな危険なことっ」

 思いっきり引く章親に、守道は少し厳しい目を向ける。

「危険でも、あれを何とかしないと宮様だって落ち着かない。都中がそうなんだ。そういう怪異を鎮めるのが、俺たちの仕事だろう」

 う、と章親が口ごもる。
 正論である。

 だが、こんなものを持ちたくはない。
 それは守道も同意見のようだ。
 どうしたもんかな、と呟いて、鬼の手を見ている。

「浄化してしまったら意味ないような気もするしな……。だからといって、不用意に触れるのも避けたい」

「うん。触るのはやめたほうがいいよ。凄い邪気」

 二人が遠巻きに悩んでいると、いきなり魔﨡が、ずいっと身を寄せた。

「何じゃ、それを持ち帰りたいのか」

 言うなり錫杖を、ぶすっと鬼の手に突き刺す。
 ひぃ、と章親の喉が鳴った。

「さ、これで良かろう。もう用はないのであろ? 帰ろうぞ」

 先に鬼の手を突き刺した錫杖を肩に担ぎ、魔﨡がくるりと踵を返す。
 このまま屋敷まで帰るようだ。

「……け、けど一番いい方法かもな」

 守道も、若干引いたように眉間を押さえていたが、納得したように立ち上がった。
 そこでようやく、簀子に控える惟道に目をやる。
< 237 / 327 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop