諸々の法は影と像の如し
「鬼を探るも、俺を探るも同じことぞ」

 ぽつりと、惟道が言った。

「どういうことだ。お前も鬼だと言うのか?」

 わけのわからないことに腹を立て、守道が声を荒げる。
 それでも惟道は、うっすら笑みを浮かべるだけだ。

「あ、あの。君が構わないんだったら、話を聞かせてくれないかな」

 守道の堪忍袋の緒が切れないうちに、慌てて章親が割って入った。
 惟道は章親を見、さらに簀子の先に目をやった。
 道仙の去ったほうだ。

「……ここで長々話すのは、後が面倒だ。そのうち道仙が様子を見に来よう。基本的に、俺が姿を見せないうちは、客を誘導した部屋には近付かぬが」

「え……っと。お客? が、よく来られるの?」

「よく、というほどでもない」

 いまいち話が続かないというか。
 聞いたことに、簡潔に答えるだけだ。
 何となく質問には答えてくれているので、気になることを、この機会に洗いざらい聞いてしまえばいいだろう。

「じゃあさ。ちょっと話を聞かせてよ」

 章親は惟道の前に胡坐をかいた。
 坐り込んだ章親に、魔﨡がちょっと不満そうな顔をしたが、鬼の手の突き刺さった錫杖を抱えたまま、どすんと章親の後ろに座った。
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