諸々の法は影と像の如し
「章親。この場で尋問する気か?」

 肩を掴んで言う守道に、章親は、うん、と軽く頷いた。

「だって別に抵抗するわけでもなく、ちゃんと答えてくれてるじゃない。だったら全部聞いてしまおうよ」

「それはそうだが……。でもここは敵陣だぜ」

「……そうなのかな?」

 先程穢れ入りの酒を勧められたし、ということは鬼をけしかけられたということで、道仙や惟道にとっては、章親らは敵ということになるのかもしれない。
 だがそれは何故なのか。

 本当に祖父の代の恨みだろうか。
 そんな強い恨み、惟道からは微塵も感じられない。

「確かに道仙からすれば、お主は敵となろうか」

 静かに惟道が言う。

「えっと、それは、僕のおじい様と道満殿の、術合戦の話?」

 章親が言うと、惟道は、こくりと頷いた。

「あのぅ。確かにおじい様も、大人げなかったとは思うんだけど。道満殿は、それほどおじい様を恨んでるの? 孫の代まで祟るぐらい?」

 自分で言いながら、章親は背筋が寒くなった。
 孫の代まで祟るとは、何と深い恨みなのか。
 そんな強い恨みを向けられるなど、今までそんな経験ないだけに泣きたくなる。

「道満殿は、どうであろうな。俺が拾われたときは、そんな誰かを恨んでいる感じはなかったが。兄(あに)様もそうだった。道仙だけじゃ、あのように愚かなのは」
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