諸々の法は影と像の如し
「お主は変わっておるのぅ。……式も人として扱っておりようだし」

 妙な顔とはいえ、嫌そうな顔ではない。
 だが章親には御魂の心がわからず、ただ困り果てたように、楓を呼んだ。

「御魂様の夜具を用意してあげて。お部屋はいらないって、じゃあここでいいんですか」

「ああ。我の主はお主だと言ったであろう。常にお主とあるのが使い魔の正しい姿であろ?」

「使い魔だなんて。御魂様をそんな風に思う陰陽師なんていませんよ。式じゃないんだから」

「そうか? まぁ我ら御魂と呼ばれる者は、確かに式などとは違うがな。そこまで我らを大事に思う陰陽師もおるまい」

「御魂様、結構ひねくれてる」

「お主が世間知らずなだけじゃ」

 馬鹿にしたように言い、御魂は脇息を抱くように寄りかかった。
 そのまま目を閉じる。

「えっ、御魂様、お疲れなの? えっと、じゃあなおさらちゃんと横になったほうがいいんじゃないの?」

 焦る章親に、ちらりと薄く開けた、目を向け、御魂はうるさそうに、ひらひらと手を振った。

「我が寝ないと、お主が落ち着かんのだろ。我のことなど気にするな。お主もさっさと寝るがいい」

 どうやら御魂的に気を遣ったらしい。
 が、章親は同じ部屋、というだけで落ち着かないのだが。

 何といってもこの御魂は女性なのだ。
 まだ女性のところに通ったこともない章親には勿体ないほどの美女である。

 少しの間、章親は御魂を見つめた。
 綺麗だが、性格が残念だ。
 だがその残念な性格のお蔭で救われている、ということに気付き、章親は羽織っていた上衣を、そろ、と御魂にかけた。
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