諸々の法は影と像の如し
「ねぇ、鬼の印ってどんな印?」

 不意に宮様が章親に聞いた。

「えっと。小さ過ぎて、どんなだったかは、はっきり見えませんでしたけど。でもまぁ感じでわかるんです」

「へぇ。ていうかさ、それが身体にあるってことは、その子自体が鬼なんじゃないの?」

 宮様の意見に、皆の視線が集まる。
 思いもしなかった発想だ。

「えっ……。いやでも……あの子が襲い掛かったことはないし。うん、あの子とは別に、ちゃんと鬼がいましたよ」

 蘆屋屋敷で鬼に襲われたとき、惟道は簀子にいた。
 あの鬼と惟道は別物だ。

 だが、『鬼を調べるも俺を調べるも同じ』とも言った。
 どういうことなのか。

「実際に襲い掛かるのは、その子の部下なのかもよ? 鬼にもそういう縦の関係があるのかもしれないし」

「う、う~ん。そうなのかなぁ?」

 言われてみれば、なるほど、そういうこともあるのかもしれない。
 が、守道がいやいや、と口を挟む。

「奴の鬼の印は、九字紋で覆われてただろ。てことは、鬼の印が封じられてるってことか? 力を封じられた鬼に、鬼が従うか?」

「あら。印が封じられてるの? ふ~ん……。ねぇ、その子、器なんじゃない?」

 宮様が、あのね、と声を潜める。
 思わず章親は身を乗り出した。
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