諸々の法は影と像の如し
「その子が無理なら、そこに鬼の一部があるでしょ。それに聞くことも出来るんじゃないの?」

 ぴ、と扇で三方の上の手を指す。
 何らかの情報が得られるかも、ということで持ち帰ったものではあるが、今のところ何の反応もない。

「そのために持ち帰ったのでしょ?」

「う~ん、まぁ。あの鬼を調べる手掛かりには、なると思うけど」

 嫌そうに、章親は結界内の三方を見る。
 調べるためには、近付かなければならない。
 穢れがあれば、どこにでも現れるらしい鬼なのだから、下手に近付いたら何が起こるかわかったものではないのだ。

「そういえば、やっぱり結界内であれば、鬼はやって来ないのか。思いっきり穢れの付いた衣もあるのに。あれを追って来たら、上手く結界内に閉じ込められるかもと思ったんだがな」

 守道が、三方の、己の衣を見ながら言う。
 あれの穢れは祓っていない。

 蘆屋屋敷では、あの衣の穢れを追って鬼が現れた。
 なので道は、あるはずなのだ。

「結界が道を遮断してるのかもね」

「でも結界内にも穢れを付ければ、鬼は出入り出来てなかったか? ならこの結界内だって入って来られるはずだ」

「結界が強過ぎるのかも」

 鬼がどういうものかわからないので、結界を越えられるといっても、どんな結界でも乗り越えられるかは疑問だ。
 何せ今衣を覆っている結界はかなり強い。
 鬼の手そのものがあるのだから当然だ。

 範囲が小さい分、さらに強さは増している。
 これほどの結界であれば、おいそれと越えられないだろう。

「じゃあとりあえず、手を調べるか。ずっとこのまま置いておくわけにもいかんしな」

 そう言って、吉平が腰を上げた。
 結界の前に進み、横に立てた御幣を取る。
 さっと結界の上で御幣を振り、呪を唱え始めた。
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