諸々の法は影と像の如し
第二十二章
「崩れてしまったな」

 吉平が、三方を覗き込む。
 そこには黒い粉のようなものが、小さな山を作っている。

「やはり、何らかの方法で、無理やり召喚された鬼だな。鬼個人では動けない、闇から穢れを渡り歩く鬼だ。人食い鬼というよりは、穢れに食いつく、というか」

「じゃあ、奴が媒体ってことですか」

「そうなるかな。やはりその者を調べないと、召喚の経緯や目的などはわからんが」

 吉平と守道の会話を聞きながら、章親は三方の上の粉に手を翳した。
 吉平の術で崩れてしまったからか、邪気もあまり感じない。

「父上。これはもう完全に浄化してしまってもいいですね」

「ああ、頼む。ここまで崩れてしまえば、鬼が取り返しに来たところで元には戻るまい」

 吉平に言われ、章親が鬼の手を浄化する。
 ぽぅ、と淡く発光し、三方の上の黒い粉は細く煙を上げると、白く変わった。
 それを、章親はさらに呪を施した紙で包んだ。

「これでよし」

 これはもう、ただの灰だ。
 例えその辺に捨てても大丈夫。
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