諸々の法は影と像の如し
「……あのね。僕みたいな下賤の者が、宮様と同じお部屋で寝るなんて、宮様に迷惑なの」

 胡乱な目で言う章親に、魔﨡はますますわからない、という顔をする。

「章親が下賤な者でなどあるものか! 我の主ぞ!」

「いや、あのね。魔﨡にはそういう身分ってものがないのかもしれないけど、宮様からしたら、僕なんて塵みたいなものなんだ。人の世って、そんなもん」

 説明するも、魔﨡は変わらず不満顔だ。
 そこに、宮様までが口を挟む。

「まぁっ。あれだけ言ったのに、まだ身分がどうのって言うの? そんな固いことでは、女子の相手など出来ないわよぉ。身分なんて天と地ほどの開きがあっても、気にせずぐいぐい行くぐらいじゃないと」

 うう、と章親は頭を抱える。
 何でいきなりこんなややこしい女子を二人も相手にする羽目になったのだろう。
 何か前世でよほど悪いことをしたのだろうか、などと泣きたくなる。

 見かねて守道が、まぁまぁ、と割って入った。

「章親は元々女子に慣れておりませぬ。いきなり宮様のような貴いお方に砕けた物言いをされても、狼狽えるばかりでしょう。宮様も、友達付き合いを許していただけるのであれば、もうちょっとゆるりと接してやるようにせねば、章親も委縮してしまうばかりではないですか?」
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