諸々の法は影と像の如し
「なかなか女難続きだなぁ」

 暗い部屋に、守道の笑いを含んだ声がする。

「やめてよ。そんな言い方」

 夜具の中で、章親は口を尖らせた。
 章親は大したことはしていないと思うのに、今日一日でやたらと疲れた。
 精神的なものだろう。

「けど、宮様の気持ちも、ちょっとは汲んでやれよ」

「友達になりたいってやつ? そりゃ別にいいんだけど、やっぱり相手は宮家の姫君で、しかも斎宮候補じゃない。何かおいそれと近付いたら悪いよ」

「そうは言ってもな、ずっと寄る辺ない暮らしで、寂しい想いをしてきたんだろ。下手に宮家だっていうんで、いくら没落してても周りは遠慮して付き合ってくれない。宮中に上がったって、この歳になったらそうそう気安く話しかけられる奴もいないだろう。まして女子だしな。内裏の女子なんて、腹の探り合いだぜ」

 守道は章親よりも、内裏に行くことが多い。
 物の怪の祓いなどは女子のほうが多いので、自然と付き合いも出来るのだろう。
 そこでいらぬ情報も入るようだ。
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