諸々の法は影と像の如し
「我はお主の御魂ぞ。常に共にあるものではないか」

「そ、そうかな」

 顔を引き攣らせながら言う章親を、同僚たちが引き気味に見る。
 このように美しい女子に『常に共に』と言われるなど羨ましい限りなはずだが、何せ相手は人ではない。

 しかもやたらと高圧的だ。
 章親でなくとも畏縮してしまいそうだ。

「いやでも、御魂を持ってる人も、そんな常に連れてないよ? そんな、御魂がうじゃうじゃいたら、陰陽寮が変な空気になっちゃうし」

 とにかく目立つこの御魂を隠したいと思い、章親は暗に退散するよう匂わす。
 だが御魂の目が、また鋭くなった。

「……お主は全く、大人しいふりをして、何気に失礼な物言いをするな」

 不機嫌そうに眉を顰め、舌打ちと共に言う。
 御魂の態度もなかなかだ。
 守道が、いたたまれなくなったように、間に割って入った。

「で、でもほら。御魂のお蔭で章親も助かったわけだし。とにかく、そうだ。章親、御魂に陰陽寮でも案内しよう」

 早口に言い、章親を引っ張る。
 守道に手を引かれ、簀子に出た章親は、ちら、と後ろを振り返った。
 御魂がてくてくついてくる。
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