諸々の法は影と像の如し
『けーーー!!』
何だか今までよりも凄い勢いで、鬼が簀子を蹴った。
がばぁっと開けた口から、涎に濡れた牙が光る。
章親の顔から血の気が引いた。
明らかに、あれは獲物に向けられたものだ。
正気を失ったような鬼の攻撃に、章親は今度こそ食われる、と思った。
が。
「来るか!」
魔﨡が素早く鬼の前に回り込み、錫杖を、ぶん! と振った。
がきん! という金属音。
「……うっ?」
見た目からすると簡単に吹っ飛ばされそうなのに、鬼は錫杖に食いついた。
びぃん、と痺れが、魔﨡の腕に伝わる。
「くっ! このっ!!」
ぶん、と錫杖を振り回すが、鬼は牙を突き立てたまま離れない。
ふー、ふー、と唸りながら、がっちりと食いついている。
「食らえぃ!」
業を煮やした魔﨡が、叫びながら錫杖を思い切り地面に振り下ろした。
じゃっと砂利と共に、鬼が地に叩き付けられる。
『げぇっ』
蛙の潰れたような声を上げた鬼だが、さっと起き上がる。
そして、間髪入れずに地を蹴った。
その思わぬ早業に、魔﨡の反応が一瞬遅れる。
『きゃけー!!』
章親の目に、鬼の凶悪な笑みが映る。
極上のご馳走を目の前にした顔だ。
今まで食いたくて仕方なかった食べ物。
それをようやく食える喜び。
「惟道殿か!」
章親にも血はべったり付いているが、鬼は章親よりも惟道を狙っている。
この鬼の狂ったような行動は、おそらく惟道を食えることへの喜びだ。
額の傷が、何らかの影響を与えたのだろう。
何だか今までよりも凄い勢いで、鬼が簀子を蹴った。
がばぁっと開けた口から、涎に濡れた牙が光る。
章親の顔から血の気が引いた。
明らかに、あれは獲物に向けられたものだ。
正気を失ったような鬼の攻撃に、章親は今度こそ食われる、と思った。
が。
「来るか!」
魔﨡が素早く鬼の前に回り込み、錫杖を、ぶん! と振った。
がきん! という金属音。
「……うっ?」
見た目からすると簡単に吹っ飛ばされそうなのに、鬼は錫杖に食いついた。
びぃん、と痺れが、魔﨡の腕に伝わる。
「くっ! このっ!!」
ぶん、と錫杖を振り回すが、鬼は牙を突き立てたまま離れない。
ふー、ふー、と唸りながら、がっちりと食いついている。
「食らえぃ!」
業を煮やした魔﨡が、叫びながら錫杖を思い切り地面に振り下ろした。
じゃっと砂利と共に、鬼が地に叩き付けられる。
『げぇっ』
蛙の潰れたような声を上げた鬼だが、さっと起き上がる。
そして、間髪入れずに地を蹴った。
その思わぬ早業に、魔﨡の反応が一瞬遅れる。
『きゃけー!!』
章親の目に、鬼の凶悪な笑みが映る。
極上のご馳走を目の前にした顔だ。
今まで食いたくて仕方なかった食べ物。
それをようやく食える喜び。
「惟道殿か!」
章親にも血はべったり付いているが、鬼は章親よりも惟道を狙っている。
この鬼の狂ったような行動は、おそらく惟道を食えることへの喜びだ。
額の傷が、何らかの影響を与えたのだろう。