諸々の法は影と像の如し
「古い呪術書だな。鬼の召喚について書かれてある。これの結界を、最後に使ったんだろう。おそらく初めに鬼を召喚したときにも使ったのだろうから、強度のほどはわかってただろうし」

 守道の説明を聞きながら、章親は巻物に目を落とした。
 難解な文字に、図解も付いている。

「これを用いて、あの鬼を召喚したの」

「そうだな。でもちょっと変えてる。これはただ召喚するだけ。餌となるモノは守られてないから、すぐに食われる。あいつはここに手を加えて、鬼を操っていたんだ」

 巻物の方法では、餌はすぐに食われている。
 後は召喚師の強力な結界と強力な術によって鬼を操るらしい。
 道仙には、そこまでの力はなかったので、蘆屋家の最強の護符である九字紋を使ったのだろう。

「そんな、勝手に変えて、もし九字紋で抑えられなかったらどうするつもりだったんだろう」

「それはそれで、別に良かったんじゃないか? 道仙は、惟道のことはどうでも良かったようだし。失敗して惟道が食われても、自分が食われなきゃ良かったんだろうさ」

 結界はきちんと張っている。
 召喚師は結界の外にいるのだ。
 食われるのは餌だけ。

「けど結局最後には食われちまった。しょうがないよな、自分が呼び出したんだから」

 守道が息をつく。
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