諸々の法は影と像の如し
「あの結界、初めは惟道殿が穢れを付けても鬼を弾いたじゃない。なのに、何で途中から破れたんだろう?」

「それだがな、惟道が言ってたろ。道仙は文献を読んで、それを再現することは得意でも、ちゃんと理解してないから穴がある。その穴が、中からの攻撃だったんだ」

「道仙殿が投げた扇で、結界が破れたってこと?」

 あの結界は、外部からの攻撃には強いが、中からちょっとでも力を加えると駄目だったのだ。
 惟道に向けて投げつけた扇が、結界を破ったのだろう。

「ちゃんと術を理解しておけば、中からにも対応出来たのかもしれんがな」

 己の欲のために鬼を召喚し、結局己が食われてしまった。
 自業自得と言えるだろう。

「屋敷に雷が落ちたから、道仙の死体も屋敷もろとも葬られただろうな」

「雷か……。やっぱり龍は、雷雨を起こすんだね」

 魔﨡が本身を現した途端に雨が降り出した。
 思い出してみて、あれ、と気付く。

「てことは、僕が風邪を引いたのは魔﨡のせいなのか?」

「はは。だから御魂は責任を感じて、お前の傍を離れなかったのかな?」

 守道も笑う。
 そして、きょろ、と周りを見回した。

「そういや御魂は?」

「それがさぁ……」

 章親が、ちょっと困った顔をした。
 察した守道が、簀子に顔を出して、先の車宿りを見る。
 そこには網代車が一台止まっていた。
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