諸々の法は影と像の如し
「え、あれれ、何で? 今までこんなに皆出て来なかったのに」

 大人になってからは、あまり見なくなっていたのだ。
 しかも、惟道は周りの物の怪に驚くでもない。

 小さなヤモリのような物の怪が、ちょこちょこと簀子を歩いて、惟道の膝に、ぴょんと乗った。
 それを合図に、その辺にいた物の怪たちが、たたた、と惟道に駆け寄る。

「こらっ。皆、惟道殿は、まだ怪我が癒えて間もないんだからね」

 わらわらと群がる物の怪に言っていると、さらさらと簀子を衣擦れの音が近付いて来た。

「章親。何をやっておる」

「今日は何だか賑やかですねぇ~。物の怪祭りですかぁ?」

 魔﨡と毛玉が歩いてくる。

「惟道殿は、物の怪に人気ですねぇ」

 毛玉が物の怪たちに取り囲まれている惟道を見て言う。
 膝や頭に物の怪を乗せても、全く動じない。
 ばかりか、惟道はこれら全てが見えている。

「凄いな。やっぱり惟道殿、ここで暮らそうよ」

 章親が言うと、周りの物の怪らが、きゃきゃきゃ、と笑い声を上げた。
 嬉しがっているようだ。

「俺が物の怪のようだからか」

「ていうかさ。惟道殿、当たり前のように物の怪が見えるよね。それに、持ってるものが綺麗だから、物の怪に好かれるんだよ」

「それは章親のお蔭じゃぞ」

 魔﨡が口を挟んだ。

「惟道は器じゃから、何事にも染まらず何事にも染まる。章親の浄化で今までの穢れも流れたのじゃろ。誰よりも気の流れを読む故、ここにいることで章親の綺麗な気を取り込んで、まっさらな状態なわけじゃ」

 どこか悔しそうに言う。
 章親の気が好きな魔﨡からすると、惟道のように章親の気を十分堪能できないところが不満なのだろう。
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