諸々の法は影と像の如し
「ちょっと人間離れした能力だよ。うん、さっき惟道殿は、僕の周りは物の怪のほうが多いって言ってたけど、確かにそうかも」

「龍神である我をも酔わせる、良い気じゃからのぅ」

 うん、と魔﨡が頷く。
 そこに、庭から守道が姿を見せた。

「あれ守道。出仕してたんじゃないの?」

「それが……」

 困ったような顔で、守道がちらりと後ろを向く。
 つられて目をやった章親が固まる。

「み、宮様っ!」

 慌てて平伏しようとする章親を、守道の後ろから顔を出した宮様が、ぴ、と扇を突き付けて制した。

「固い! って、いつも言ってるでしょ! いい加減に慣れて頂戴!」

「いえ、あの。そういうわけには……」

 平伏するのを止められてしまったので、微妙な格好のまま、章親はだらだらと汗を流す。
 確かに宮様の言う通り、もう慣れてしまいそうなほど頻繁な来訪だ。

 が、だからといって身分の差が縮まるわけでもない。
 軽々しく口を利いていい相手ではないのだから。

「今日もまた、供もなくこのようなところに……」

「供ならいるわよ」

 ぴしゃりと章親の苦言を遮り、宮様は扇で隣の守道を指す。

「全く、友達のところに遊びに行くのに、ぞろぞろ供連れだなんて面倒臭いわ。あら惟道、お加減は如何? 随分酷い傷跡になっちゃったわねぇ」

 固まる守道と章親など気にせず、宮様は軽く言いながら、ずかずかと階を上がって章親の横に座った。
 慌てて章親は、物珍しそうにしている物の怪たちを、宮様から遠ざけた。
< 322 / 327 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop