諸々の法は影と像の如し
「とんでもないです。御魂様を僕が縛るだなんて」

「だがお主、このままではいつまでたっても我を『御魂様』としか呼べぬぞ。御魂は我だけではない。お主が我を呼ぼうとしても、御魂様、では我のことかわからん」

 う、と章親が口をつぐむ。
 確かにその通りだ。

「お主はもっと毅然と、我と相対するがよい。さぁ、我の名を呼べ」

「いや、えっと。そういきなり言われましても」

「お主は我の主になりたくないのか!」

 ひと際大きく、御魂が吠えた。
 顔は怒っているが、何となく泣き出しそうな雰囲気だ。

 え、何で、と思いつつも、章親は慌てて両手を振った。

「えええっと! いえ、御魂様に不満なんて、あろうはずがありませんよ」

 何といっても類を見ないほどの強力な御魂だ。
 しかも見目麗しい。

 何となく粗暴なところが不満といえば不満だが、それは己の技量のなさによるものもあるのではないかと章親は思う。
 なので御魂自身に文句をつける筋合いは、章親にはないのだ。

「ただ、ただでさえ僕は、そういった主従関係ってものを好まないっていうか。皆対等に仲良くしたほうが楽しいじゃない」
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