諸々の法は影と像の如し
「考えてもみよ。強い陰陽師に強い御魂が必要か? 強い奴は御魂の力など必要なかろう。あまりに強過ぎる力というのは、人には御せぬ。その辺の均衡は、自然と取れるものよ」

「そうかもしれないけど。でもそんなの、御魂様は不満でしょ? 情けない陰陽師が主だなんて」

「……お主が情けないのは、攻撃が必要なときだけよ」

 ぼそ、と言い、それに章親が反応する前に、ぽん、と誤魔化すように肩を叩く。

「とにかく! 我が認めておるのだ。使役される我がいいと言っておるのだから、お主が遠慮することなどない!」

「あのぅ。御魂様は、何で僕に降りたの? 何にそんなに惹かれたの?」

 おずおずと、章親は御魂に聞いてみたが、途端に御魂は、ぱっと顔を逸らす。

「そそそ、それは……。お主の力を認めたからよ」

「僕にはそんな力ないよ?」

「……いいから。とにかく、まずは我の名を呼べ!」

 癇癪を起こしたように、御魂がほとんど恫喝するように章親に迫る。
 章親も根負けし、やっと頷いた。
 が。

「……思いつかない」

「馬鹿者ーーーっ!!」

 御魂の怒号が、渡殿に響き渡った。
< 35 / 327 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop