諸々の法は影と像の如し
 六条邸の庭先では、大きな護摩壇がもくもくと煙を上げている。
 それにげほげほと噎せながら、章親はさりげなく周りを見回した。

 物々しい雰囲気に反して、辺りには清々しい空気が満ちている。
 これなら怖いことにはならないかな、と胸を撫で下ろし、前列で呪を唱える守道を見る。

---やっぱり僕には、皆の前で祓いを行うなんてこと出来ないよ---

 そもそも体格が違うのだ。
 護摩壇の前で印を結び呪を唱える守道は、上背もあり堂々としている。
 一つ二つ年上なだけなのに、小柄で華奢な章親とはまるで違う。

---そういえば、守道が召喚した御魂って……---

 ふと章親が顔を上げると、守道の傍に小さな子供が従っているのが見えた。

---え? あれ?---

 意外そうに、章親は子供を見た。
 守道ともなれば、結構な御魂を召喚出来たはずだ。

 もっとも召喚者の能力と御魂の能力が、いつも一致するわけではない。
 稀に召喚者の波長と御魂の波長がぴったり合うと、お互いの力に関係なく相性のいい御魂が引き寄せられるという。
 そこまで相性のいい御魂も珍しく、そうそうない現象とのことだが。

---じゃあ、きっとあれが、ぴったりの御魂なんだ。さすが守道---

 感心しつつも、不思議に思う。
 いくら相性が良くても、あのような子供の御魂であれば、何の力もないのではないか?
 だが召喚の儀を終えた守道から、落胆の声は聞いていない。
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