諸々の法は影と像の如し
「まぁ……名前の力だろうけどな」

 今回の参拝のお供の末席に、守道も加えられるのだ。
 非公式に陰陽寮の者が賀茂社のあらゆるところに配置され、人知れず警備はするが、公な警護人として参加するのは異例の大抜擢だ。

「でも凄いよ。守道なら何かあっても安心だものね」

「お前だって、配置にはつくんだろ?」

「うん。でもあそこは自然の浄化能力も優れてるから、僕の力もそうそう必要ないと思うんだけど」

「けど魔が巣くう森でもあるからな。油断するなよ」

 森は浄化能力もあるが、逆に魔の巣くう場所でもある。
 内裏にある宴の松原など、誰も入らない。

「怖いこと言わないでよ」

「何かあったら、御魂に助けて貰えばいいじゃないか。強いだろ」

 ははは、と笑いながら、守道は、きょろ、と辺りを見回した。

「そういえば、あの御魂はどうした?」

「それがさぁ……」

 うんざりと、章親が背後に目をやる。
 部屋の奥には御簾が垂れており、うっすらと人影が見える。
 その影は座っているわけではなく、脇息に頭を乗せて横になっているようだ。

「ん? 御魂は病気か?」

 この世のものではない御魂に病気などがあるのかとも思うが、弱ることぐらいあるのだろうと、守道は章親に聞いた。
 が、章親はふるふると首を振る。

「ずっとああなんだよ。拗ねちゃってさ。口も利いてくれないし、何より僕の寝床を奪われちゃった」
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