諸々の法は影と像の如し
 どうやら御魂は、向こうを向いて寝ているようだ。

「何したんだよ」

 ちょっと呆れたように、守道が言う。
 章親は困ったように、肩を竦めた。

「何もしてないよ。ただ僕が、御魂様の名前をつけないから」

「え、まだ契約してないのかよ」

 驚く守道を、章親はちらりと見た。

「守道は、あの御魂様と契約したってこと?」

「当たり前だろ。俺が主だからな。そこは、はっきりさせないと」

 当然のこととして言う。

「名前は? 何て言うの? あの子が名乗ったの?」

「なわけないだろ。俺がつけないと意味がない。むしろ強制的につけてこそだぜ」

「そ、そうなんだ」

「おいこら。今更だぜ」

 心底呆れたように言う。
 言ってしまえば式を作るのを得意とする章親が知らないということなど、あり得ないほどの事柄なのだ。

「いや、だって僕は、式に名前を与えても、式の好きな名前にするし。僕が与えるっていうよりは、式と一緒に決めてるつもりだし」

「……まぁ、お前はそうだろうな」

 息をついて、守道が言う。
 ずっと小さい頃からの付き合いで、守道は誰よりも章親のことをわかっている。

 何に対しても優しい章親は、自身の作った式も『召し使う』、という感覚がない。
 仲の良い友達のようなのだ。

 状況に応じて都度式をぽんぽん生み出すこともせず、一度作った式は、ずっと使う。
 まるで普通の女房のようなのだ。
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