諸々の法は影と像の如し
「お前が作る式は、荒ぶることもなく有能だし。契約を交わさなくても、式自体がお前に懐いてるしな」

 だがそんなことは、まずないなのだ。
 章親ならではの人柄によるものと、己で気付いていない、類稀なる力によるものと言える。

「けど、御魂は違うだろ」

 御魂は式とは違う。
 喋るし、契約をしないままでは危険なのだ。

「そうだけどさ……」

 う~ん、と困ったように言いながら、章親は御簾の向こうでふて腐れている御魂を見た。

「龍神様なんて、契約しちゃって大丈夫かなぁ」

「何言ってんだよ。契約してしまえば、こっちのもんだろ」

 ひそ、と声を潜める守道だが、章親のほうが、でかい声を出す。

「な、何てこと言うんだよ! それこそ御魂様が可哀想じゃない!」

「名を与えられないまま、中途半端な状態に置かれるほうが可哀想だぜ」

 う、と章親が黙る。
 だから御魂は怒っているのだろうか。

「召喚されてしまったら、主が死ぬまで元の世界に帰れんしな。折角相性のいい章親のところに来たんだろうに、章親が認めてないみたいじゃないか」

「そ、そっか。そうだね」

 守道の言う通りだ。
 よし、と肚を決めた章親だったが、ふと疑問が湧く。
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