諸々の法は影と像の如し
 書庫の奥の棚に、古い木箱がある。
 巻物や書物はそのまま棚に積まれているのが普通だ。
 大事なものは木箱に入っているものもあるが、そういったものでもないように、埃を被って放置されている。

 章親は木箱を引き抜いてみた。
 そのとき、何かが足元にひらりと落ちた。

 章親が落ちたものに目を落とした瞬間。

「うわっ!」

 箱が、中から弾けた。
 同時に何かが飛び出して、章親に襲い掛かる。

「なっ何だこれ!」

 薄暗い書庫で、いきなり何かに飛び掛かられ、章親は仰天した。

「た、助け……。楓っ! 楓ーーっ!!」

 章親が叫んだ途端、ふ、と楓が現れ、床を蹴って章親に襲い掛かるものに体当たりをする。
 が、元々楓は攻撃用に作ったわけではない。
 威力はないらしく、章親の上のモノは、大した痛手を受けていないようだ。

 きしゃーっと妙な唸り声を発すると、牙を剥きだした。
 ひ、と章親の顔が引き攣る。

 この牙を首に突き立てられたら終わりだろう。
 その考えの通り、牙が迫る。

「助けて! 御魂様ーーっ!!」

 叫んだが、これでは御魂は現れない。
 『御魂』は総称であり、章親の御魂を示すものではないからだ。
 だが。
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