諸々の法は影と像の如し
「ち、父上っ! それ、本当ですか? 何でそんなものが、うちにあるんです」

「いや、うちだからこそ、だろう。他では管理出来んものなのかもしれんし」

「だったらなおさら、そういうものがあるって、もっと大々的に書庫の戸に張り紙でもしておいてくださいよ!」

「うん、そういえばそうだな。いや、私も父上からちらっと聞いたような気がするだけで、今の今まで忘れてたし」

 そんなヤバいものの管理をしておきながら、家族にもろくに言わないとは。
 心配させないためかもしれないが、知らなかったらうっかり封印を解いてしまうことだってあろう。

 そう思った章親の顔が蒼白になる。
 まさに自分ではないか。
 明らかな物の怪が、箱から飛び出した。

「あり得ない! 父上、ほんと、何で今まで黙ってたんです!」

「いや、忘れてたんだって」

 ボケた答えを返す父に、章親は涙目になった。

「僕が書庫に行ってるの、知ってたでしょう! 書庫っていうだけで思い出さないんですか。あああ、どうしよう~」

 きゃんきゃんと言い募り、頭を抱える。
 あまりの章親の取り乱しように、吉平は章親の顔を覗き込んだ。

「どうしたんだ。その箱が何か?」

「その箱じゃないことを祈りますが」
< 63 / 327 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop