諸々の法は影と像の如し
「でもあそこは元々古いものが満載だ。封を施した箱だって一つや二つではないぞ? それに、父上が封を施したのなら、そう簡単には解けん。安心しなさい」

 言われて章親は顔を上げた。
 そういえばそうだ。
 世紀の大陰陽師・安倍 晴明が自ら強力な封印をしたからこそ、誰も知らなくても大丈夫なのだ。

「そ、そうですよね……。おじいさまの封印を、僕みたいなひよっこが解けるわけないですよね」

 ちょっとだけほっとした章親だったが、吉平は、少し顔を引き攣らせた。

「えーっと。……もしかして、その箱の封印、解いちゃった……とか?」

「ええ。でも別に、解こうと思って解いたわけじゃなくて、普通に、ごく自然に蓋開きましたよ?」

 うむむ、と吉平の顔が渋くなる。

「おじいさまの封印とは、思えないなぁ~」

 楽観的に考えてみるが、やはりどこか不安は残る。
 しばし黙考していた吉平が、ふと思いついたように言った。

「お前は何で、それの蓋を開けたんだ?」

「えっと……。何か……気になって」

 そういえばあのときは、妙に書庫の奥が気になった。
 何か怖くて、すぐに出ようとしたのに、やたら気になったのだ。
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