諸々の法は影と像の如し
「お前は気を人一倍感じるだろう。だから、私は忘れるほど何も感じなくても、お前にはわかったのかもしれん」

「いやいや。だって僕、あそこに行ったのは初めてじゃないですよ。それだけの理由だったら、もっと昔に気付いてますよ。小さいときに、あんな恐ろしい気を感じたら、大きくなっても書庫なんかに入れませんて」

「む。それもそうだ。年月が経って封印が弱くなっていたのか? いや、そんな弱い力ではないはずだ。何か、特別な作用があって、お前を呼び寄せたのかもしれん」

「やめてくださいよー!」

 話がどんどん恐ろしくなる。
 章親は喚いて、吉平の言葉を遮った。

 だが放っておくわけにもいかない。
 何かが、逃げ出したのは確かなのだから。

「い、嫌ですけど、ともかくその箱について調べてみます。父上も、おじいさまから何か聞いてないか思い出してくださいよ」

「そうだな。逃げ出したとあっては、捨て置くわけにもいかんしな」

 そう言ったとき、不意に、ざわ、と木立が揺れた。
 振り向くと、森の奥に妙な気を感じる。

「あそこ……」

 章親が指差すほうを見、吉平は身構えた。
 とはいっても武官ではない陰陽師は、刀などは差していない。
 だが術が、何よりの武器になるのだ。
 ……普通は。
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