諸々の法は影と像の如し
「守道の御魂はいないの?」

 章親が周りを見ながら言うと、守道はさりげなく懐から護符を出しながら答えた。

「御魂の召喚に御魂を立ち会わせると、変に共鳴したりするからな。いらん負担はないほうがいいだろ。召喚に失敗したって、章親ぐらいなら何とか助けてやるよ」

 幼い頃からずっと一緒にいたこともあり、頼り甲斐のある守道には、どうしても甘えてしまう。
 いつまでも頼っていてはいけないと思っていても、やはりこういう場に守道がいてくれるだけで、章親は安心するのだ。

「うん。頼んだよ」

 やっと少し表情を和らげ、章親は再度祭壇に向き直った。
 心を落ち着けて印を結び、呪を唱える。

 途端に周りの空気が変わる。
 清浄になるのだ。
 吉平が、少し満足げに口角を上げた。

 章親は己のことを何の力もない、と言うが、そうではない。
 攻撃性こそ皆無だが、場の鎮静化などの能力は群を抜いているのだ。

 章親の周りの空気は、いつも澄んで綺麗である。
 故に鳥や動物、自然のモノに好かれる。

 章親の作る式が穏やかなのも、そのためである。
 澱みなく唱えられる呪も耳の心地よく、聞く者を和ませる。
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