諸々の法は影と像の如し
---う~ん……。何だろう、気になるなぁ。いっそのこと、毛玉に会って聞いてみようか……---

 それが早いかもしれない。
 が、自ら好きこのんで毛玉の前に出て行くのはどうだろう。

 何せ好戦的なモノかもしれないのだ。
 うっかりすると命が危ういかもしれない。

 庭に面した階に座り、しばし頭を悩ませていた章親は、ふと寝殿前の庭にある大きな池に目をやった。
 大貴族のような規模はないが、結構大きな池だ。

---そうだ。御魂様は龍神なんだから、水に関する名前がいいかな---

 そう思い、水に関することをいろいろ考えてみる。
 だが豪雨や雷雨など、空恐ろしいことしか出て来ない。

 章親は頭を抱えた。
 どんだけ印象が悪いんだか。

---あの御魂様だって、見た目は綺麗なんだから。でもそういえば、あれが本来の姿なのかな? 本体は龍だったりするんだろうか。じゃ、喉に触ったらいけないよね---

 龍の喉辺りには、一枚だけ逆さになった鱗があるという。
 そこに触ると龍は烈火の如く怒り、その者を殺すとか。
 いわゆる『逆鱗に触れる』というやつだ。

---怖いなぁ。うっかり手が当たったりしそう……。でも御魂様、全然龍っぽくないよね。何より女の人なんだし、髭もないし---

 もちろん龍など見たこともないので、絵巻物でしか知らないが、その姿は角があり、長い髭があり、鋭い牙と爪を持っている。
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