諸々の法は影と像の如し
「……え? 御魂様、どうしたの?」
きょとんと御魂を見上げ、次いできょろきょろと辺りを見回す。
確かに空気がぴりっとした。
何かが起こったはずだが、特に見えるところに変化はない。
おかしいな、となおもきょろきょろする章親に、御魂は錫杖の先で、とん、と床を叩いた。
「やっと名を呼んだか。とはいえ、あくまで『向こう』での『我ら』の種の『総称』だが」
毛玉が飛び込んできたりしたら困るな、などと思っていた章親は、しばらくしてから、え? と御魂を見た。
「名前……」
「先程呼んだであろ」
そういえば、いきなり御魂は目の前に現れた。
へそを曲げてから、御魂は部屋から出ないし、今日だって一緒にいたわけではない。
今ここにいるということは、まさに章親の言葉に反応したからだ。
だが章親には、御魂の名を呼んだ、という自覚はない。
ん、と考え、はた、と気付く。
「も、もしかして、婆素鶏……」
こくりと御魂が頷く。
さぁっと章親の顔から血の気が引いた。
そのまま、そろそろと視線を書物に落とす。
『多頭龍とも。数が極めて多く、強力であるという意味で、陽の極まりである『九』の文字を冠し九頭竜王とも呼ばれる』
きょとんと御魂を見上げ、次いできょろきょろと辺りを見回す。
確かに空気がぴりっとした。
何かが起こったはずだが、特に見えるところに変化はない。
おかしいな、となおもきょろきょろする章親に、御魂は錫杖の先で、とん、と床を叩いた。
「やっと名を呼んだか。とはいえ、あくまで『向こう』での『我ら』の種の『総称』だが」
毛玉が飛び込んできたりしたら困るな、などと思っていた章親は、しばらくしてから、え? と御魂を見た。
「名前……」
「先程呼んだであろ」
そういえば、いきなり御魂は目の前に現れた。
へそを曲げてから、御魂は部屋から出ないし、今日だって一緒にいたわけではない。
今ここにいるということは、まさに章親の言葉に反応したからだ。
だが章親には、御魂の名を呼んだ、という自覚はない。
ん、と考え、はた、と気付く。
「も、もしかして、婆素鶏……」
こくりと御魂が頷く。
さぁっと章親の顔から血の気が引いた。
そのまま、そろそろと視線を書物に落とす。
『多頭龍とも。数が極めて多く、強力であるという意味で、陽の極まりである『九』の文字を冠し九頭竜王とも呼ばれる』