諸々の法は影と像の如し
何ということでしょう。
よりによって、龍神の中でも最も恐ろしげな竜王なのではないですか?
あまりの衝撃に頭の中まで敬語になりながら、章親はさりげなく後ろに下がって御魂と距離を取った。
「もっとも『我を示す名』ではあるけども、我の個人的な名ではないが。今ここにいる婆素鶏は我だけなのだし、お主が呼べば我のこととなる」
淡々と言う御魂を恐れつつも、まじまじ見る。
が、どう見ても見た目は普通の人型であり、美しい女子である。
頭が複数あるわけでもない。
「あ、あのぅ。何で御魂様は、普通のお姿なんです?」
おずおずと聞いてみる。
ちょっと御魂が眉を顰めた。
「い、いえ。だって文献じゃ、多頭龍だって……。九頭竜王というらしいじゃないですか。でも御魂様、そんなお姿じゃないし」
「それはお主ら人間の、勝手な想像よ。まぁ頭脳がいっぱいある、と思って貰えば良かろう」
「そ、そうなんだぁ」
あからさまに、ほっと息をつく章親を冷やかに見、御魂は再度、とん、と床を叩いた。
「それで? 名を呼んだとはいえ、それはあくまで我の種の総称。まぁこの世に我以外の婆素鶏はおらぬから、それを名としても構わんが。それで契約するのか?」
あ、と章親が顔を上げる。
御魂を見、そしてもう一度、手元の書物に目を落とした。
よりによって、龍神の中でも最も恐ろしげな竜王なのではないですか?
あまりの衝撃に頭の中まで敬語になりながら、章親はさりげなく後ろに下がって御魂と距離を取った。
「もっとも『我を示す名』ではあるけども、我の個人的な名ではないが。今ここにいる婆素鶏は我だけなのだし、お主が呼べば我のこととなる」
淡々と言う御魂を恐れつつも、まじまじ見る。
が、どう見ても見た目は普通の人型であり、美しい女子である。
頭が複数あるわけでもない。
「あ、あのぅ。何で御魂様は、普通のお姿なんです?」
おずおずと聞いてみる。
ちょっと御魂が眉を顰めた。
「い、いえ。だって文献じゃ、多頭龍だって……。九頭竜王というらしいじゃないですか。でも御魂様、そんなお姿じゃないし」
「それはお主ら人間の、勝手な想像よ。まぁ頭脳がいっぱいある、と思って貰えば良かろう」
「そ、そうなんだぁ」
あからさまに、ほっと息をつく章親を冷やかに見、御魂は再度、とん、と床を叩いた。
「それで? 名を呼んだとはいえ、それはあくまで我の種の総称。まぁこの世に我以外の婆素鶏はおらぬから、それを名としても構わんが。それで契約するのか?」
あ、と章親が顔を上げる。
御魂を見、そしてもう一度、手元の書物に目を落とした。