諸々の法は影と像の如し
「ああ、この調子だと、穏やかな優しい御魂が降臨しそうだな」

 結界の外ですら何とも心地よい空気になっている。
 守道がうっとりとしていると、いきなり章親の呪が止まった。

 そして次の瞬間、物凄い気の渦が感じられた。

「っ!!」

 異変に気付いた守道が腰を浮かせた、そのとき。

「うわぁっ!!」

 章親の叫び声と共に、何かが落っこちて来た。

「章親!」

 守道と吉平が駆け寄り、結界を覗き込む。
 ばばっと放電しているように激しく光り、しばらくしてから光が消える。
 衝撃で蝋燭も消えてしまったので、閉め切った室内は暗く、よく見えない。

「章親、大丈夫か?」

 守道が叫ぶが、結界内からは返事がない。
 吉平が慌てて灯を持ってきた。

「吉平殿……。結界を解いても大丈夫でしょうか」

「う……む……」

 不測の事態を想定し、結構頑丈に結界を張ってしまったため、解かない限りは中に入れない。
 吉平は首を伸ばしてよくよく結界内を見てから、大丈夫だろう、と結界を解いた。

「章親っ!」

 結界に飛び込んだ守道だったが、すぐにその足が止まる。
 何かが章親の上に覆い被さっているのだ。

「あ、章親……」

 恐る恐る声をかけてみると、その章親の上のモノが、もぞりと動いた。
 思わず守道が身構える。
< 8 / 327 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop