諸々の法は影と像の如し
「……そうでなくて」

 若干胡乱な目で、御魂がため息をつく。

「章親の気が心地いいから、皆章親を慕うんじゃな。力の弱い悪霊などは綺麗な気の充満している章親には自然と近寄れぬし、誰かが章親を襲おうとしても、お主を慕うモノがお主を守る。章親はあらゆるモノに好かれておる」

「え……。じゃあ僕が今まで怖い目に遭ってこなかったのは、物の怪が守ってくれてたからなの?」

「まぁそういうことか。それと、その気によって、自然と守られておるのもある」

「じゃあますますあの毛玉には可哀想なことしちゃったんじゃない」

「……だから。そう何にでも情をかけるな。強力な力を持った物の怪であれば、気だけでは防げぬし、それこそ周りにいるちゃちいモノなどでは守れぬ」

 しれっと言う。
 一体あの毛玉はどういうものなのか。
 やはりそこがわからないと、下手に近付くことも出来ない。

「でもさぁ、やっぱり気になるんだよ、あの毛玉」

 呟いた後で、はっとする。
 二回目に毛玉が現れたのは糺の森だ。
 また移動したのかはわからないが、近く宮様が来られるというところに潜んでいる可能性もあるということだ。

「どっちにしろ、毛玉は探さなきゃ」

 がばっと立ち上がる章親を、御魂がちょっと楽しそうに見た。

「ではお供しよう。そろそろ夕暮れだし、いい時刻じゃ」
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