諸々の法は影と像の如し
 いそいそと階を降りる御魂に、先に立っていたはずの章親が、う、と止まった。
 夕暮れは逢魔が刻。
 魔が最も活発になる時刻だ。

「あ、明日にしようかなぁ……」

 尻込みする章親の腕を、御魂がむんずと掴む。

「何を言っておる。大事な行事を控えておるのじゃろ。まして陰陽師は警護担当ではないか。ここで何かあったら大変なことぞ。しかも物の怪絡みとなれば、まさに陰陽師の落ち度じゃ」

「そ、それはそうだけど……」

 何かいかにも楽しげなのが気になるが、確かに御魂の言う通りである。
 物の怪が潜んでいたのを知っていながら何もせず宮様を迎えるわけにはいかない。

「でも僕一人じゃ……」

 さすがに怖い。
 ただでさえビビりなのに、これから暗くなろうという時刻から、いかにもな森に出掛けるのは気が重い。

「そうだ。守道も誘おう」

 ぽん、と手を叩いて、章親は懐から出した懐紙を手早くたたみ、連絡用の小さな式を作った。

「守道のところに飛んで、事情を話しておいておくれ」

 紙の式に語りかけ、ふっと息を吹きかけると、式はふわりと浮き上がり、屋敷の外へと飛んで行った。
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