諸々の法は影と像の如し
 それから手早く支度をし、やはり嫌々ながらも章親は御魂に引き摺られるように、森に向かった。
 途中で合流した守道は、御魂と歩いて来た章親を見、ぽんと肩を叩いた。

「やっと正式に契約したのか」

「ん、いや、半分……かなぁ。あとは御魂様に似合う名前を考えてあげるんだ」

 章親が言うと、少し後ろを歩いていた御魂が、一瞬だけへにゃ、と顔を崩した。
 どうもこのほんわかした空気が心地よくて和んでしまうのだ。

「全くお前は呑気だなぁ。でもまぁ、仲直り出来たみたいで良かった」

 章親が意地を張って御魂との仲が険悪になっていたときには心配だった。
 陰陽師が御魂を召喚出来るのは一生に一度だけ。
 契約しないままだと、誰かに無理やり横取りされることもあり得る。

「我を横取りしようとするような輩には、我は従わんがな」

 つん、と御魂がそっぽを向く。
 おや、と守道は御魂を見た。

「てことは、あなたは章親が良くて章親に降りたわけですか」

「そらそうじゃろ。嫌な奴には降りん」

 あっさりと言う。
 そんな御魂を、章親はちょっと不思議そうに見た。

 力の均衡を考えれば、さして能力のない己のところに強い御魂が降りるのも、わからないでもない。
 だが御魂の言い方では、『御魂』というものはそれだけで陰陽師に降りるわけではないようだ。

 やはり御魂自身がその陰陽師を気に入らないと降りないのだろう。
 この御魂は、自分の何がそんなに気に入ったというのだろうか。
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