諸々の法は影と像の如し
「だって、あっ章親だーって思ったら嬉しくって。しかも封印解いてくれたし!」

「ええっ。もしかしてあれ、飛び掛かってきたんじゃなくて、飛びついただけなの?」

 言われてみれば、のしかかられただけで、実際に牙を突き立てられたわけではない。
 ただそれは、突き立てられる前に御魂が救ってくれたから、とも言える。
 あのまま大人しくしていられるほど、章親の肝は太くない。

「もちろんだよ。なのにいきなりその龍神にぶちのめされるしさぁ。あっ式神も体当たりしてきた~」

 きゃんきゃんと言う毛玉は、やはり立派な牙だけが目立ち、喋っている内容と全然見合っていない。
 これであれば上に飛びつかれて口を開けただけで、食われると誰もが思うだろう。

「したが、こ奴、封印されておったのであろ」

 黙って二人のやり取りを聞いていた御魂が、不意に口を挟んだ。

「封じられていた、ということは、何かやらかした、ということではないのか?」

 うぐ、と毛玉の動きが止まる。
 そして、しおしおと項垂れた。

「ちょっとお酒が過ぎただけだよ。章親も巻き込んで、どんちゃん騒ぎしちゃったからさぁ、晴明が怒って」

 あ、と章親が手を打った。
 そういえば、小さいときに何かあったような。
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