諸々の法は影と像の如し
「そうだ。何か昔に倉で物の怪たちと大騒ぎしたことがある。ああっ! あのときの、やたらと酒臭かった物の怪か!」

「え~、酷いなぁ~。でも当たり~」

 ぱちぱちぱち、と毛玉が手を叩く。

「何じゃ章親。こ奴と知り合いか」

「うん。そうだ、昔よく遊んだんだよ。でも毛玉、そんな姿だったかなぁ。もっと人っぽかったと思うよ? いかにもな物の怪だったら、僕怖がるだろうし」

 まじまじ見ても、思い出さなかった。
 章親が思い出した物の怪で合っているのであれば、わかったはずだ。
 それほどよく遊んでいた。

「そ、それは……」

 ちょっと、毛玉が言い淀む。
 ぽりぽりと頭を掻いて、言いにくそうに口を開いた。

「わしは酒がないと、力を発揮出来んというか……」

「酒を飲むと力が出るの?」

 はて、そんな物の怪いただろうか。
 首を捻る章親の前で、毛玉は視線を彷徨わせている。

「力というか……やる気というか。酒を飲むと気分が良くなって、何でも出来る気になるじゃろ」

「それは単に酔っ払っておるだけではないか」

 御魂が呆れたように言う。
 毛玉はまた、ぽりぽりと頭を掻いた。

「そ、そうとも言う……かの」

 このお気楽さ。
 何となく思い出してきた。
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