諸々の法は影と像の如し
 そんな御魂の気持ちには気付かず、毛玉はばんざーい、と諸手を挙げた。

「わーい。やっとまた章親と遊べる」

「阿呆。章親はもう大人ぞ。ていうかお前の主じゃ。我の主でもあるのに、呼び捨てにするな」

 ぴ、と錫杖を突き付け、御魂が言う。
 先のことで、すっかり機嫌が悪くなってしまったらしい。
 が、やはり毛玉は嬉しそうに、びし、と姿勢を正す。

「了解です! じゃあ章親様、とりあえずこの結界、解いてくださーい」

「……いいけど。でも毛玉、お酒は控えないと駄目だよ」

「封じられて、さすがに凝りました。寂しかったぁ~」

 章親が結界を解くなり、毛玉はびょーんと飛びついてくる。
 小さいときは大きな鞠だと思ったが、今の毛玉は章親の肩の上に乗れるほどだ。
 物の怪なので、重さもない。

「そっかぁ。僕の記憶が曖昧なぐらい小さいときから、ずっと一人だったんだね」

「さすがに晴明様は厳しかったから、謝っても許してくれなかったし。わしもいらずらが過ぎたし」

 しゅん、と言う。
 章親の祖父だからか、自然に晴明にも『様』がついている。

 祖父は、多分毛玉を封じたこと自体を忘れたのではないか。
 結構抜けていたのだ、あの人は。
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