諸々の法は影と像の如し
「しかしお前、長く封じられていたくせに、何故今回はやけに存在を主張出来たのだ。書庫など、章親は初めてでもあるまい。今まで何度も入ったであろうに、そんな気、感じなかったのであろ? 章親ともなれば、僅かな気でも気付けるはずじゃ」

 じろりと御魂は疑いの目を毛玉に向ける。
 章親も、自分の記憶を探ってみた。

 御魂の言う通り、何度も書庫に入ったことはあるが、毛玉の封じられていた箱のあった辺りがやけに気になったことなど今までない。

「そうだ。時間が経って封印が弱くなってたのかと思ったけど、それにしちゃ毛玉の主張は強かったよ?」

 いきなり封印が弱くなったとも考えにくい。
 章親が問うと、はっとしたように毛玉は肩の上できょろきょろした。
 しばらく、辺りを窺うように注意深く眺めまわす。

「……そういえば、何も感じない。いえね、あの少し前に、わしと同様の気を感じたと思って。同様というか、何というのかな。鬼の気というか。しかも、よろしくない感じだったもんで、章親様が危ないのかと思って焦ったわけ。一生懸命箱の中で暴れたから、古くなってた封印の札が、ずれたのかも。一応晴明様も、内側にまで呪を施すほどのきつい封印はしなかったし。わしの必死さが、章親様に伝わったってこと」

 嬉しそうに言う毛玉だったが、御魂の顔は険しく、章親は顔面蒼白だ。
 あれれ? と毛玉が無邪気に首を傾げた。
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