陰影のある奥行き深いお話だな、というのが第一印象でした。水墨画のように感じるのは、歴史ファンタジーだからかもしれません。
読み進めていくと浮き彫りになる因縁、対して和ませるシーンの調和が読み手を物語に引き込んでくれます。
章親の持つ劣等感は、ある意味で親近感がわくというか、現代にも多分、共通する気持ちはあるはず。自分ではわからない自分の能力は人から見れば羨むものかもしれない。道仙にも本当はそういうところがあったのかもしれない。何が両者を二分したか。自分の身の丈を知り、それでも人を恨まず、他者には感謝を。自分の力を過信し、燻るのは人のせいだと恨み、他者を蔑む。出自の違いと言えばそれのせいかもしれないけれど、人に向けた心は自分に返ってくると私は思います。惟道という存在は、このお話の中でそれを具現化しているようにも感じました。
人間臭さの滲む歴史ファンタジー、楽しく読ませて頂きました。